ストレスチェックを職場環境改善に活かすには?

前回の記事「ストレスチェックの集団分析とは?|結果の見方と注意点」では、
集団分析の基本的な考え方や結果の見方、小規模事業場で注意したい分析人数など
について解説しました。

集団分析によって職場の特徴が見えてきたら、
次は、その結果を職場環境の改善に活かしていきます。

集団分析で「仕事の負担が大きい」「上司や同僚からの支援が少ない」といった
傾向がみられても、その結果だけで原因や改善方法が決まるわけではありません。

実際の職場の状況を確認し、管理監督者や労働者の意見なども聞きながら、
「なぜこのような結果になっているのか」「どのような改善ができそうか」
を考えていくことが大切です。

職場環境改善というと、大がかりな制度変更や設備投資をイメージするかもしれませんが、
日々の仕事の進め方や情報共有、相談しやすい環境づくりなど、
身近なところから取り組めることもあります。

この記事では、集団分析の結果を職場環境改善につなげるための考え方と、
具体的な進め方について解説します。

目次

この記事のポイント

・集団分析と、その結果を踏まえた職場環境改善は事業者の努力義務
・集団分析の結果だけで原因を決めず、実際の職場の状況も確認する
・管理監督者や労働者の意見も取り入れながら、改善する内容を検討する
・業務の進め方、情報共有、作業環境など、身近なところから改善できることもある
・改善後も職場の状況を確認し、次の取組につなげていく

集団分析の結果を職場環境改善につなげる

ストレスチェック制度では、集団分析を行い、その結果を踏まえて職場環境の改善に
取り組むことが事業者の努力義務とされています。

職場環境改善では、集団分析の数値そのものを良くすることを目指すのではなく、
結果を手がかりとして、働く人にとって負担となっている職場の要因を確認し、
改善につなげることが大切です。

たとえば、「仕事の量的負担が大きい」という結果がみられた場合にも、
その背景にはさまざまな要因が考えられます。

・特定の時期に業務が集中している
・一部の労働者に業務が偏っている
・人員が不足している
・業務の進め方に無駄がある
・急な仕事や予定変更が多い

など、実際の職場を確認して初めて見えてくることがあります。
そのため、集団分析の結果を出発点として、職場の状況を確認していきます。

職場環境改善はどのように進める?

集団分析の結果を職場環境改善につなげる際には、
次のような流れで考えると進めやすくなります。

集団分析の結果から職場の特徴を確認する

まずは、集団分析の結果から、どのような特徴がみられるのかを確認します。
たとえば、

・仕事の量的負担が大きい
・仕事のコントロールが低い
・上司の支援が少ない
・同僚の支援が少ない

など、改善を検討する手がかりを整理します。

前回の記事で解説したように、集団分析の結果は職場や管理監督者を評価するための点数
ではありません。
まずは「このような傾向がある」というところから考えていきます。

実際の職場の状況を確認する

次に、集団分析の結果と実際の職場の状況を照らし合わせます。
厚生労働省のマニュアルでも、集団分析結果だけではなく、

・管理監督者が日頃の職場管理の中で把握している情報
・労働者や労働組合などから聞かれた意見
・外部機関から提供された参考データやアドバイス

なども踏まえて、職場環境改善を検討することが示されています。
これらに加えて、時間外労働の状況や業務量、人員体制、職場巡視で把握した作業環境なども
確認するとよいでしょう。

改善できそうなことを検討する

職場の状況が見えてきたら、どのような改善ができるかを検討します。
すべてを一度に変えようとする必要はありません。

「現在の職場で取り組めることは何か」
「比較的取り組みやすいことは何か」
「労働者にとって負担の軽減につながりそうなことは何か」

という視点で、具体的な方法を考えていきます。

改善策を実施する

改善する内容が決まったら、実際に取り組みます。

誰が担当するのか、いつ頃までに行うのかを決めておくと、取り組みを進めやすくなります。
すぐに対応できるものと、設備投資や人員体制の見直しなど時間が必要なものがある場合には、
短期的に取り組むことと、中長期的に検討することを分けてもよいでしょう。

取り組み後の状況を確認する

改善策を実施した後は、職場の状況がどのように変わったかを確認します。

管理監督者や労働者から話を聞いたり、勤務状況や作業環境を確認したりするほか、
翌年度の集団分析結果も一つの参考になります。

改善して終わりではなく、取り組みを振り返り、必要に応じて次の改善につなげていく
ことが大切です。

集団分析の結果から考えられる改善の例

集団分析でみられた特徴によって、確認するポイントや改善の方向性は異なります。

仕事の量的負担が大きい場合

業務量だけではなく、仕事の偏りや繁忙期、残業時間、業務の進め方などを確認します。
たとえば、

・業務の分担を見直す
・業務の優先順位を整理する
・作業手順を見直す
・繁忙期の応援体制を検討する
・不要な業務や会議を見直す

といった方法が考えられます。

仕事のコントロールが低い場合

仕事の進め方について、労働者自身が判断したり工夫したりできる範囲が
少なくなっていないかを確認します。

・仕事の進め方について意見を聞く
・役割や担当範囲を整理する
・一定の範囲で本人が仕事の進め方を決められるようにする
・業務改善について労働者から提案してもらう

など、その職場に合った方法を検討します。

上司の支援が少ない場合

「上司の支援が少ない」という結果が出ても、管理監督者個人の問題とは限りません。

管理監督者自身が多忙で、部下と話す時間を確保できていないことや、
相談や情報共有の仕組みが整っていないことも考えられます。

・定期的に話せる機会をつくる
・相談先や相談方法を明確にする
・管理監督者の業務量を確認する
・管理監督者を支援する体制を整える

など、職場全体の仕組みとして考えることが大切です。

同僚の支援が少ない場合

同僚同士の情報共有や、困ったときに協力できる環境になっているかを確認します。

・業務の情報を共有する機会をつくる
・チーム内で仕事の進捗を確認する
・お互いに相談しやすい役割分担にする
・職場の課題について話し合う機会をつくる

などの方法が考えられます。

作業環境そのものがストレス要因になっていることもある

職場環境改善というと、人間関係やコミュニケーションなどに目が向きやすいかもしれません。

しかし、暑さや寒さ、騒音、照明、換気、身体的な負担など、
実際に働いている作業環境がストレス要因になっていることもあります。

厚生労働省の小規模事業場向けマニュアルでは、
労働者約25人の事業場で、集団分析の結果から「職場環境によるストレス」に着目し、
実際の作業現場を確認した事例が紹介されています。

確認したところ、夏場の高温による負担が大きいことが分かり、
スポットクーラーを新たに設置する改善につながりました。

また、製造業の事例では、身体的負担や騒音、照明、温度、換気などの結果を踏まえて、
遮熱塗装やLED照明への交換、冷暖房設備の導入、休憩室の改善などに取り組んでいます。

このように、集団分析の結果と実際の作業現場を結びつけて考えることも、
職場環境改善の大切な視点です。

労働者の意見を取り入れながら考える

職場環境を改善するためには、実際にその職場で働いている労働者の意見も参考になります。
管理監督者や人事労務担当者だけで改善策を決めるのではなく、

「仕事をするうえで困っていることはないか」
「もう少しこうなれば仕事がしやすいということはないか」
「現在の職場で改善できそうなことは何か」

などについて、労働者から意見を聞く方法もあります。

厚生労働省のマニュアルでは、同僚のサポートが低かった職場で、「コミュニケーションのよい、
働きやすい職場づくり」をテーマに労働者参加型の話し合いを行った事例が紹介されています。
その中から、

・情報共有のためのホワイトボードを設置する
・他のチームとの情報交換会を行う

という具体的な改善策が提案され、実際の取組につながりました。
現場で働いている人だからこそ気づく課題や、実行しやすい改善方法もあります。

集団分析の結果を職場で共有し、労働者と一緒に改善方法を考えることも、
職場環境改善を進める方法の一つです。

小規模事業場ではできるところから取り組む

小規模事業場では、人事労務担当者や産業保健スタッフなど、
職場環境改善を専門的に担当する人がいないことも多いでしょう。

また、すぐに人員を増やしたり、大きな設備投資をしたりすることが難しい場合もあります。
そのような場合でも、

・業務の分担を少し見直す
・情報共有の方法を変える
・定期的に話せる機会をつくる
・作業場所の暑さや照明などを確認する
・休憩しやすい環境を整える

など、現在の職場で取り組めることがあります。

大切なのは、集団分析で課題が示されたからといって、
すぐに大きな改善策を考えることではありません。

結果をきっかけに職場を見直し、その職場で取り組めることから改善につなげていく
ことが大切です。

必要に応じて、ストレスチェックの委託先や産業医などの産業保健スタッフ、
地域産業保健センターなど、外部の専門家に相談することも検討しましょう。

まとめ

集団分析は、結果を確認するだけではなく、
職場環境の改善につなげることで、ストレスチェック制度をより有効に活用できます。

まずは集団分析から職場の特徴を確認し、実際の勤務状況や作業環境、管理監督者や労働者の意見
などと照らし合わせながら、改善できることを考えていきます。

職場環境改善には、業務量や仕事の進め方の見直しだけでなく、情報共有、上司や同僚の支援、
暑さや照明などの作業環境まで、さまざまな取り組みがあります。

特に小規模事業場では、大がかりな取り組みを行うことだけを考えるのではなく、
その職場の状況に合わせて、できるところから取り組み、
その後の変化を確認しながら次の改善につなげていくこと
が大切です。

次の記事「ストレスチェックと個人情報|プライバシー保護と不利益取り扱いの禁止」では、
ストレスチェックの結果を取り扱う際のプライバシー保護や、
労働者に対する不利益な取り扱いの禁止について解説します。

参考資料
厚生労働省 ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策
 -「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」
 -「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」
厚生労働省 関係法令等 
 -「ストレスチェック指針」

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この記事を書いた人

企業の健康管理室等で30年間、産業保健業務に従事。
健康管理、メンタルヘルス対策、安全衛生活動など幅広い業務に携わる。製造事業場では、特殊健康診断や職場巡視などの労働衛生業務も経験。
2026年、岡本労働衛生コンサルタント事務所を開業。
労働衛生コンサルタント|保健師|キャリアコンサルタント

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