ストレスチェックの実施方法|実施時期・対象者・調査票などの決め方

前回の記事では、ストレスチェックを実施するために必要な体制として、
実施者と実施事務従事者の役割について解説しました。

実施者や実施事務従事者を決めて実施体制を整えたら、次に、いつ実施するのか、
誰を対象とするのか、どの調査票を使用するのかなど、具体的な実施方法を決めていきます。

また、高ストレス者の選定方法や、医師による面接指導が必要となった場合の
依頼先についても、実施前に決めておく必要があります。

この記事では、ストレスチェックを実施する前に決めておきたい主な事項について
解説します。

目次

この記事のポイント

  • ストレスチェックは、1年以内ごとに1回、定期的に実施する
  • 実施時期とあわせて、対象となる労働者を確認しておく
  • 調査票は「職業性ストレス簡易調査票」57項目版の使用が推奨されている
  • 高ストレス者の選定方法は、実施者の提案などを踏まえて決定する
  • 医師による面接指導が必要となった場合の依頼先も、あらかじめ決めておく

ストレスチェックの実施時期を決める

ストレスチェックは、1年以内ごとに1回、定期的に実施します。

実施する月が法律で決められているわけではないため、事業場の状況に応じて
実施時期を決めます。

ストレスチェックでは、個人の結果だけではなく、一定の集団ごとに結果を集計・分析し、
職場環境の改善につなげていくことも重要です。

そのため、集団分析を行う単位となる労働者については、できるだけ同じ時期に実施する
ことが望まれます。

定期健康診断とあわせて実施することもできますが、誕生月ごとに健康診断を行っているなど、
年間を通じて実施時期が分散している事業場では、ストレスチェックをいつ実施するか
別に検討しておくとよいでしょう。

ストレスチェックの対象者を確認する

ストレスチェックの対象となるのは「常時使用する労働者」で、正社員だけではなく、
契約社員やパートタイム労働者なども、契約期間や所定労働時間などの要件によって
対象となります。

ここで注意したいのが、事業場の労働者数を数えるときの基準と、
ストレスチェックの対象者を判断するときの基準は異なるという点です。

ストレスチェック制度の実施義務の対象となる事業場かどうかを判断する際には、
常態として使用している労働者を数えます。この場合、正社員だけでなく、
契約社員やパートタイム労働者なども含めて労働者数を確認します。

一方、実際にストレスチェックを受ける対象者については、
契約期間や1週間の所定労働時間など、一定の要件があります。

そのため、事業場の労働者数としては数えるものの、ストレスチェックの受検対象に
はならない労働者がいる場合があります。

「事業場に何人の労働者がいるか」と「そのうち誰がストレスチェックを受けるのか」は
分けて確認しておきましょう。

使用する調査票を決める

ストレスチェックでは、次の3つの領域に関する項目を含む調査票を使用します。

① 仕事のストレス要因
仕事の量や質、仕事のコントロールなど、職場における心理的な負担の原因に関する項目

② 心身のストレス反応
疲労感、不安感、抑うつ感など、心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目

③ 周囲のサポート
上司や同僚など、職場における周囲からの支援に関する項目

厚生労働省では、これらを含む標準的な調査票として、
「職業性ストレス簡易調査票」57項目版の使用を推奨しています。

また、57項目版を簡略化した23項目版も示されています。ただし、23項目版では、
57項目版と比べて集団分析を詳細に行うことができない点に留意が必要です。

そのため、単に質問数の少なさだけで選ぶのではなく、ストレスチェック後に
どのような集団分析を行いたいかも考えて調査票を選ぶことが大切です。

調査票については、実施者の提案なども踏まえて事業者が決定します。

回答方法を決める

ストレスチェックの回答方法には、紙の調査票を使用する方法や、
Web上で回答する方法があります。

Webでの実施は、配布・回収や集計を効率化しやすい一方、事業場によっては、
すべての労働者に1人1台のパソコンが支給されていなかったり、個人の社用メールアドレスが
なかったりすることもあります。

このような場合には、紙での実施が適していることもあります。
職種や勤務形態、ICT環境などを踏まえて、労働者が受検しやすい方法を選びましょう。

なお、紙で実施する場合には、記入した調査票が周囲の人の目に触れないように回収するなど、
個人情報の取扱いにも配慮が必要です。

高ストレス者の選定方法を決める

ストレスチェックを実施する前に、どのような基準で高ストレス者を選定するかについても
決めておきます。

「職業性ストレス簡易調査票」を使用する場合には、厚生労働省が示している
基準・方法を用いることが適当とされています。
基本的には、

  • 「心身のストレス反応」の評価点が高い人
  • 「心身のストレス反応」が一定以上で、さらに「仕事のストレス要因」と「周囲のサポート」
    の評価点が著しく高い人

を高ストレス者として選定する考え方が示されています。

具体的な評価方法や基準については、実施者や委託先の提案などを踏まえて事業者が決定します。
一方、実際に個々の労働者のストレスチェック結果を評価し、
高ストレス者に該当するかを判断するのは実施者です。

さらに、高ストレス者のうち、医師による面接指導を受ける必要がある労働者についても、
実施者が選定します。

事業者が個人の回答内容を確認して、高ストレス者を判断するものではないことに注意が必要です。

医師の面接指導の依頼先を決める

ストレスチェックの結果、高ストレス者として選定され、実施者が必要と認めた労働者から
申出があった場合には、事業者は医師による面接指導を実施します。

そのため、ストレスチェックを実施してから医師を探すのではなく、
面接指導を依頼する医師についても、あらかじめ決めておくことが大切です。

ストレスチェックを外部機関に委託する場合には、その外部機関が面接指導もサービスの
一つとして提供していることがあります。委託先を検討する際には、
ストレスチェックの実施だけではなく、面接指導への対応についても確認しておきましょう。

また、労働者数50人未満の事業場では、地域産業保健センター(地産保)に依頼し、
医師による面接指導を無料で受けることができます。

地産保は、独立行政法人労働者健康安全機構が運営する支援機関で、
医師による面接指導のほか、健康診断結果についての医師からの意見聴取など、
産業保健に関する支援を受けることができます。

ただし、地産保ではストレスチェックそのものは実施していません。
また、ストレスチェックの実施者を地産保の登録産業医に依頼することもできません。
面接指導を地産保に依頼する場合には、対象者が決まった時点で申し込みが必要です。

大企業の支店・営業所などは地産保を利用できる?
地産保では、企業規模として労働者数50人未満の小規模事業場を優先して支援しています。
大企業の支店・営業所など、事業場単位では50人未満であっても、企業内に各事業場の
産業保健活動を総括的に指導する「総括産業医」がいる場合は、支援の対象外となります。
また、総括産業医がいない場合でも、本社等の産業保健スタッフの協力を得られる場合などは、
利用できないことがあります。

実際に面接指導が必要になったときに対応に迷わないよう、ストレスチェックの実施前に
依頼先や申込方法を確認しておきましょう。

まとめ

ストレスチェックを円滑に実施するためには、実施体制を整えるだけではなく、
実施時期や対象者、調査票、回答方法、高ストレス者の選定方法、面接指導の依頼先などを
事前に決めておく必要があります。

特に50人未満の事業場では、外部機関や地域産業保健センターの活用も含めて、
ストレスチェック後の対応まで見通して準備しておくことが大切です。

次の記事では、ストレスチェックを外部機関に委託する場合の委託先の選び方や、
契約時に確認しておきたいポイント
について解説します。

参考資料
厚生労働省 ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策
 -「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」
 -「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」
厚生労働省 関係法令等 
 -「ストレスチェック指針」

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この記事を書いた人

企業の健康管理室等で30年間、産業保健業務に従事。
健康管理、メンタルヘルス対策、安全衛生活動など幅広い業務に携わる。製造事業場では、特殊健康診断や職場巡視などの労働衛生業務も経験。
2026年、岡本労働衛生コンサルタント事務所を開業。
労働衛生コンサルタント|保健師|キャリアコンサルタント

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