高ストレス者への医師による面接指導|申出から実施まで

前回の記事「ストレスチェック実施の流れ|受検から結果通知・保存まで」では、
ストレスチェックの実施から結果の通知・保存までの流れについて解説しました。

ストレスチェックの結果、高ストレス者として選定され、実施者が面接指導を受ける必要が
あると認めた労働者は、事業者に申し出ることで医師による面接指導を受けることができます。

労働者から申出があった場合、事業者は面接指導を担当する医師と日程を調整するとともに、
面接指導に必要な勤務状況などの情報を準備します。

特に小規模事業場では、面接指導を担当する医師が事業場内にいないことも多いため、
あらかじめ申出から面接指導までの流れを確認しておくことが大切です。

この記事では、高ストレス者から面接指導の申出があった場合に、
事業者が行う対応について解説します。

目次

この記事のポイント

  • 面接指導の対象となる労働者から申出があった場合、事業者は医師による面接指導を実施します
  • 労働者が安心して申し出られるよう、申出方法や情報の取扱いをあらかじめ明確にしておきます
  • 面接指導は、申出後おおむね1か月以内に実施します
  • 事業者は、労働時間や業務内容など、面接指導に必要な情報を医師に提供します
  • 50人未満の事業場では、地域産業保健センター(地産保)を利用できます(利用には条件あり)

医師による面接指導の対象となる人

ストレスチェックで高ストレス者として選定されたすべての労働者が、
法律に基づく医師の面接指導の対象となるわけではありません。

高ストレス者として選定され、実施者が面接指導を受ける必要があると認めた労働者が
対象となります。

さらに、実際に面接指導を実施するためには、対象となった労働者本人から事業者への
申出が必要です。

そのため、ストレスチェックの結果を通知する際には、対象となった労働者に面接指導を
受けることができることや、申出方法などをわかりやすく案内しておくことが大切です。

面接指導の申出を受けたら

面接指導の対象となる労働者から申出があった場合、事業者は遅滞なく
医師による面接指導を実施します。

「遅滞なく」とは、申出からおおむね1か月以内が目安とされています。
申出を受けてから医師を探すと、面接指導までに時間がかかることがあります。

ストレスチェックの実施前に、面接指導を依頼する医師や申出後の連絡方法、
日程調整の流れなどを決めておくと、その後の対応がスムーズです。

申出方法をわかりやすくしておく

面接指導の申出は事業者に対して行われます。

直接事業者に申し出る方法のほか、ストレスチェックを外部機関に委託している場合には、
外部機関を経由して申出を受け付ける方法も考えられます。

外部機関を経由する場合でも、面接指導の申出があったことは事業者に伝えられます。
そのため、

  • 誰に申し出るのか
  • どのような方法で申し出るのか
  • 申出後、誰にどのような情報が伝わるのか

などを、あらかじめ労働者に知らせておくことが大切です。

外部機関に委託する場合は、具体的な手続きについて委託先の「サービス内容事前説明書」
などで確認し、申出から面接指導までの流れを整理しておきましょう。

労働者が安心して申し出られる環境を整える

高ストレス者と判定されても、「会社に知られるのではないか」「仕事に影響するのではないか」
といった不安から、面接指導の申出をためらうことも考えられます。

事業者が個人のストレスチェック結果を取得するには、原則として本人の同意が必要です。

また、面接指導の申出に当たっても、事業者がストレスチェックの詳細な結果を確認することが
必ずしも必要なわけではありません。

誰がどの情報を取り扱うのかを明確にし、必要な範囲で情報を取り扱うことが、
労働者が安心して面接指導を利用できる環境づくりにつながります。

面接指導の日時と場所を調整する

申出があったら、面接指導を担当する医師と日程を調整します。
面接指導は、就業時間内に実施することが望まれます。

労働者が面接指導を受けることで業務上の負担が生じないよう、
必要な時間を確保することも大切です。

また、面接指導を行う場所は、周囲に話が聞こえないなど、
プライバシーを確保できる場所を選びます。

面接指導を受けること自体が周囲に知られることを負担に感じる労働者もいるため、
日時や場所の設定にも配慮しましょう。

面接指導を担当する医師に必要な情報を提供する

面接指導では、医師がストレスチェックの結果だけを見るのではなく、
労働者の勤務状況や心身の状況なども確認します。

そのため事業者は、面接指導を担当する医師が適切に判断できるよう、
必要な情報を準備して提供します。
主な情報として、次のようなものがあります。

  • 労働者の氏名、年齢、所属部署、役職など
  • 個人のストレスチェック結果
  • ストレスチェック実施直前1か月間の労働時間、労働日数、深夜業の状況など
  • 業務内容や責任の程度
  • 定期健康診断などの結果
  • ストレスチェックを実施した時期が繁忙期であったかどうか

これらの情報は、可能な範囲で事前に整理し、面接指導を担当する医師に提供して
おくとよいでしょう。

ストレスチェック結果の取扱いに配慮する

個人のストレスチェック結果を面接指導を担当する医師に提供する場合には、
労働者のプライバシーに配慮した方法で取り扱います。

例えば、外部機関から密封した状態で医師に送付したり、労働者本人が面接指導の際に
持参したりする方法があります。

事業者が必要以上に個人のストレスチェック結果を見ることがないよう、
誰が、どの情報を、どのような方法で医師に渡すのかをあらかじめ決めておくことが大切です。

面接指導では何を確認する?

面接指導では、医師が主に次のような内容を確認します。

  • 勤務の状況
  • 心理的な負担の状況
  • その他の心身の状況

勤務の状況については、労働時間や業務内容だけでなく、
職場でのストレス要因や周囲からの支援の状況なども確認します。

また、ストレスチェックの結果や本人からの聞き取りなどをもとに、
必要に応じてセルフケアに関する助言や医療機関への受診勧奨などが行われます。

面接指導は、精神疾患の診断や治療を行うためのものではありません。
労働者の心身の状態と勤務状況を確認し、健康を確保するために必要な対応を検討する
ことが目的です。

オンラインで面接指導を行うこともできる

医師による面接指導は、一定の要件のもと、情報通信機器を利用して行うこともできます。

オンラインで実施する場合も、医師が労働者の様子を把握し、
円滑にやり取りできる環境を整える必要があります。

また、医師が必要と判断した場合には、直接対面による面接指導を行います。

オンラインで実施する場合にも、周囲に会話が聞こえない場所を確保するなど、
プライバシーへの配慮が必要です。

面接指導の費用は事業者が負担する

ストレスチェック制度に基づく医師の面接指導は、
法律により事業者に実施が義務づけられているため、費用は事業者が負担します。

オンラインで実施する場合には、面接指導に必要となる通信環境や通信料などについても
確認しておきましょう。

なお、ストレスチェック制度に基づく面接指導は、保険診療として行うものではありません。

50人未満の事業場では地産保の利用も検討する

労働者数50人未満の事業場では、産業医の選任義務がないため、
「面接指導を誰に依頼すればよいのかわからない」ということもあるでしょう。
このような場合には、地域産業保健センター(地産保)を利用する方法があります。

地産保では、労働者数50人未満の小規模事業場を対象として、
高ストレス者に対する医師の面接指導などの産業保健サービスを無料で提供しています。
利用には一定の条件や回数制限などがあるため、事前に管轄の地産保へ確認しておきましょう。

地産保に面接指導を依頼する場合には、地産保の窓口を通じて、
面接指導を担当する医師の手配や日程調整が行われます。

ストレスチェックを実施する段階で、面接指導が必要になった場合の依頼先まで
事前に確認しておくと安心です。

まとめ

高ストレス者への医師による面接指導は、労働者から申出があって初めて具体的な
手続きが始まります。

申出があった場合には、事業者は面接指導を担当する医師と日程を調整し、
必要な勤務情報などを準備して、遅滞なく面接指導につなげます。

大切なのは、申出があってから対応方法を考えるのではなく、
申出先、面接指導を依頼する医師、情報の受け渡し方法などをあらかじめ整理しておくことです。

特に小規模事業場では、外部機関や地域産業保健センターなども活用しながら、
労働者が安心して面接指導を受けられる体制を整えておきましょう。

医師による面接指導を実施した後は、その結果を踏まえて、事業者が医師から意見を聴き、
必要に応じて就業上の措置を検討します。

次の記事「面接指導後の対応|医師の意見聴取と就業上の措置」では、
面接指導後に事業者が行う対応について解説します。

参考資料
厚生労働省 ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策
 -「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」
 -「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」
厚生労働省 関係法令等 
 -「ストレスチェック指針」

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この記事を書いた人

企業の健康管理室等で30年間、産業保健業務に従事。
健康管理、メンタルヘルス対策、安全衛生活動など幅広い業務に携わる。製造事業場では、特殊健康診断や職場巡視などの労働衛生業務も経験。
2026年、岡本労働衛生コンサルタント事務所を開業。
労働衛生コンサルタント|保健師|キャリアコンサルタント

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