産業保健総合支援センターとは?中小企業が活用できる無料支援を紹介

中小企業の担当者が産業保健の専門家に相談している様子を描いたイラス

中小企業では、従業員の健康管理やメンタルヘルス対策、職場環境の改善など、さまざまな
産業保健上の課題があります。一方で、産業保健の専門職が社内にいない、人事労務担当者が
ほかの業務と兼任しているなど、十分な体制を整えることが難しい事業場も少なくありません。

こうした事業場の産業保健活動を支援する公的機関として、全国に「産業保健総合支援センター
(さんぽセンター)」が設置されています。
産業保健総合支援センターでは、全国共通の基本的な支援に加え、地域の状況や事業場の
課題に応じた支援も行っています。

ここでは、神奈川産業保健総合支援センターで実施されている取り組みを例に、
中小企業が活用できる具体的な無料支援を紹介します。なお、支援内容や対象条件、
実施方法などは地域によって異なる場合があるため、詳しくは各都道府県の産業保健総合支援
センターにご確認ください。

目次

この記事のポイント

  • 産業保健総合支援センターは、全国47都道府県に設置された公的な支援機関
  • 産業保健に関する専門相談、研修、情報提供などを無料で利用できる
  • メンタルヘルス対策や治療と就業の両立支援など、専門家による訪問支援もある
  • 神奈川県では、転倒・腰痛災害防止や化学物質管理などの支援も実施されている
  • 支援内容によって対象事業場や利用条件が異なるため、事前の確認が必要

産業保健総合支援センターとは

産業保健総合支援センターは、独立行政法人労働者健康安全機構が全国47都道府県に設置
している、業保健活動を支援する公的機関です。
産業医、保健師、衛生管理者などの産業保健スタッフに加え、事業者や人事労務担当者などを
対象として、専門的な相談対応、研修、情報提供、事業場への訪問支援などを行っています。

提供される支援は原則として無料です。
産業保健の専門職がいない事業場や、専門的な助言を必要としている中小企業にとって、
活用できる相談先の一つです。

2.産業保健総合支援センターの主な支援内容

産業保健に関する専門的な相談

産業保健に関するさまざまな課題について、専門スタッフによる相談対応が行われています。
例えば、次のような相談ができます。

  • 健康診断後の事後措置や健康管理の進め方
  • メンタルヘルス不調者への対応や職場復帰支援
  • ストレスチェック制度の実施や職場環境改善
  • 化学物質管理やリスクアセスメント
  • 労働衛生関係法令や産業保健活動の進め方

相談方法には、窓口、電話、メール、実地相談などがあり、内容に応じて専門家から助言を受ける
ことができます。

産業保健に関する研修・セミナー

産業医や保健師、衛生管理者、人事労務担当者などを対象に、産業保健に関する専門的・実践的な
研修が開催されています。
メンタルヘルス対策、健康管理、治療と就業の両立支援、化学物質管理など、さまざまな
テーマについて学ぶことができます。

研修の日程や開催方法は、各都道府県の産業保健総合支援センターのホームページで確認できます。

産業保健に関する情報提供

ホームページやメールマガジンなどを通じて、産業保健に関する制度、研修、各種支援事業などの
情報が提供されています。
日頃の情報収集や、事業場の産業保健活動に必要な知識を得る際にも活用できます。

中小企業が活用できる具体的な無料支援

産業保健総合支援センターでは、専門的な相談や研修に加えて、事業場の課題に応じた訪問支援
なども行っています。
ここでは、神奈川産業保健総合支援センターが案内している主な支援を紹介します。

メンタルヘルス対策への支援

神奈川産業保健総合支援センターでは、労働者数300人未満の中小規模事業場を対象に、
メンタルヘルス対策に関する個別訪問支援を行っています。メンタルヘルス対策に精通した
専門スタッフが事業場を訪問し、取り組みの進め方などについて助言します。

また、管理監督者や若年労働者を対象としたメンタルヘルス教育も実施しています。
例えば、次のような場面での活用が考えられます。

  • メンタルヘルス対策の進め方を相談したい
  • 職場の相談体制を整備したい
  • 管理監督者向けのラインケア教育を実施したい
  • 職場復帰支援プログラムの作成について助言を受けたい

メンタルヘルス対策をこれから始める事業場や、既存の取り組みを見直したい事業場にとって、
専門家の支援を受けられる機会となります。

治療と就業の両立支援

病気の治療を受けながら働く労働者を支援するため、治療と就業の両立支援に関する相談や
訪問支援などが行われています。
主な支援内容には、次のようなものがあります。

  • 事業場における両立支援制度の導入・整備に関する助言
  • 管理監督者や労働者への啓発・教育
  • 治療を受ける労働者と事業場との個別調整支援
  • 両立支援プランや職場復帰支援プランの作成に関する助言

治療と就業の両立支援では、労働者本人の意向や健康状態、職場の状況などを踏まえ、
必要な対応を検討することが重要です。専門家の助言を活用することで、事業場内の支援体制
づくりや個別事例への対応を進めやすくなります。

化学物質管理・作業環境改善への支援

化学物質管理や作業環境改善についても、専門家による無料支援が行われています。
神奈川産業保健総合支援センターでは、従業員50人未満の事業場を対象に、作業環境改善に関する
専門家の個別訪問支援を行っています。また、化学物質管理に関する専門家への相談や訪問支援
については、従業員数を問わず利用できます。
主な支援内容には、次のようなものがあります。

  • 化学物質のリスクアセスメントの進め方
  • 化学物質管理体制の整備
  • 現場の設備や作業状況を踏まえた改善の助言
  • 作業環境や作業方法の改善に関する相談

特に、化学物質を取り扱う中小企業では、専門的な知識や人材の確保が課題となる場合があります。
こうした支援は、自社の化学物質管理の状況を確認し、必要な改善を検討する際に役立ちます。

転倒・腰痛災害防止への支援

神奈川産業保健総合支援センターでは、「健康応援!ゼロ災無料出張サービス」として、
転倒災害や腰痛災害の防止に向けた支援を行っています。
健康運動指導士や理学療法士などの専門家が事業場を訪問し、身体機能の維持・改善や転倒・腰痛災害
の防止に向けた取り組みを支援するものです。転倒災害や腰痛災害が発生した事業場、
再発防止に取り組む事業場などが対象として案内されています。

支援内容には、健康度や体力、姿勢の測定、バランス・ロコモ度チェック、転倒予防運動、
腰痛予防のための運動指導などがあります。労働者の高齢化が進む中、身体機能の変化を踏まえた
労働災害防止対策は重要な課題です。作業環境の改善とあわせて、労働者の身体機能の維持や転倒予防
などに取り組む際に活用できる支援です。

健康教育への支援

神奈川産業保健総合支援センターでは、仕事中の健康起因事故の防止に重点を置いた
「健康教育無料出張サービス」も案内されています。
健康診断で異常の所見が認められた労働者への対応や、健康起因事故の防止などをテーマに、
保健師や管理栄養士が事業場を訪問し、健康教育を行うものです。

健康教育は、労働者自身が健康状態に関心を持ち、健康保持増進に取り組むきっかけとなります。
対象となる事業場や実施内容については、事前にセンターへ確認することが必要です。

産業保健総合支援センターと地域産業保健センターの違い

産業保健総合支援センターと連携して、小規模事業場を支援する窓口として
「地域産業保健センター(地さんぽ)」があります。
両者の主な違いは、支援対象とサービス内容です。

項目産業保健総合支援センター地域産業保健センター
主な対象事業者、人事労務担当者、産業保健スタッフ等労働者数50人未満の小規模事業場とその労働者
主な支援専門相談、研修、訪問支援、情報提供等健診後の医師意見聴取、面接指導、健康相談等
費用無料無料

地域産業保健センターでは、産業医の選任義務がない小規模事業場に対して、健康診断結果について
の医師からの意見聴取や長時間労働者への面接指導などの支援を行っています。
利用には事前の申し込みが必要で、利用回数には制限があります。

どちらのセンターを利用すればよいか分からない場合は、まず都道府県の産業保健総合支援
センターに相談するとよいでしょう。

※地域産業保健センターの具体的な支援内容や利用方法については、別の記事で紹介する予定です。

無料支援を活用する際のポイント

産業保健総合支援センターのサービスは、事業場の課題に応じて利用することができます。
ただし、支援内容によって対象となる事業場の規模や利用条件、申し込み方法などが異なります。
利用前に確認しておきたいこと

  • 相談したい内容が、どの支援事業に該当するか
  • 自社の従業員数や事業場の状況が対象条件に合っているか
  • 相談、訪問支援、研修など、どのような支援を受けたいか
  • 申し込み方法や利用回数など、利用にあたっての条件
  • 支援を受けた後、事業場内でどのように取り組みを進めるか

無料支援を利用することは、専門家の助言を受けながら、課題を整理し、必要な取り組みを
検討するきっかけになります。一方で、健康管理や職場環境改善は、一度の相談や訪問だけで
完結するものではありません。公的支援を活用しながら、事業場の実情に応じて、
計画的・継続的に産業保健活動を進めることが重要です。

まとめ

産業保健総合支援センターは、事業場の産業保健活動を支援する公的機関として、
全国47都道府県に設置されています。
専門的な相談や研修、情報提供に加え、メンタルヘルス対策、治療と就業の両立支援、
化学物質管理、労働災害防止など、さまざまな無料支援が行われています。

参考資料・関連サイト
労働者健康安全機構|産業保健総合支援センター
神奈川産業保健総合支援センター

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

企業の健康管理室等で30年間、産業保健業務に従事。
健康管理、メンタルヘルス対策、安全衛生活動など幅広い業務に携わる。製造事業場では、特殊健康診断や職場巡視などの労働衛生業務も経験。
2026年、岡本労働衛生コンサルタント事務所を開業。
労働衛生コンサルタント|保健師|キャリアコンサルタント

目次