前回の記事では、管理監督者が実践するラインケアとして、
部下の「いつもと違う」変化に気づき、早期支援につなげることの重要性について
ご紹介しました。
早期に対応することで、メンタルヘルス不調の重症化を防げる場合もありますが、
状況によっては休業が必要となることもあります。
このような場合に重要となるのが、職場復帰支援です。
復職支援は、休業した労働者が安心して職場に戻り、再び働き続けられるよう、
会社が計画的に支援していく取り組みです。
この記事では、厚生労働省の
「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き(以下、「手引き」)」
をもとに、職場復帰支援の考え方と、企業が準備しておきたいポイントについて解説します。
ポイント
こちらの記事のポイントはこちらです。
- メンタルヘルス不調による休業は、多くの企業で起こり得る
- 職場復帰支援プログラムの事前整備と計画的な取り組みが大切
- 厚生労働省の「職場復帰支援の手引き」を活用することが重要
メンタルヘルス不調による休業は特別なことではない
「うちの会社には関係ない。」
そう考える経営者の方もいるかもしれません。
しかし、令和6年厚生労働省の労働安全衛生調査(実態調査)では、
過去1年間にメンタルヘルス不調により1か月以上休業または退職した労働者がいた事業所は
約1割強となっています。
また、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者の割合は0.5%となっており、
多くの事業場で起こり得る問題であることが分かります。
つまり、「休業する人が出てから考える」のではなく、
あらかじめ対応方法を準備しておくことが重要です。
職場復帰支援は企業の重要な取り組みの一つ
同調査では、多くの企業がメンタルヘルス対策の一つとして
職場復帰支援に取り組んでいることが示されています。
令和6年、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所について、
取り組み内容(複数回答)をみると、「ストレスチェックの実施」が65.3%と最も多く、
次いで、「職場環境等の評価及び改善(ストレスチェック結果の集団(部、課など)
ごとの分析を含む)」が54.7%となっています。
手引きでは、円滑な職場復帰のために、事業場が計画的に支援を進めることが示されています。
主な取り組みは次のとおりです。
- 職場復帰支援プログラム・制度の整備
- 職場復帰の可否判断
- 就業上の配慮を含む職場復帰支援プランの作成・実施
- 職場復帰後のフォローアップ
中小企業では、
- 専門スタッフが少ない
- 復職支援の進め方が分からない
- ケースごとの対応になってしまう
といった課題も少なくありません。
このため、厚生労働省では、企業が計画的かつ円滑に職場復帰支援を進められるよう、
基本的な考え方や具体的な進め方を示しています。
職場復帰支援とは
職場復帰支援とは、メンタルヘルス不調により休業した労働者が、
円滑に職場へ復帰し、その後も就業を継続できるよう支援する取り組みです。
職場復帰支援というと、「復職時の対応」だけをイメージしがちですが、
それだけではありません。
休業開始から復職後までを一連の流れとして支援することが大切です。
職場復帰支援の基本的な考え方
職場復帰支援プログラムを整備する
心の健康問題により休業した労働者が円滑に職場復帰し、
継続して就業できるようにするためには、休業開始から通常業務への復帰までの流れを
あらかじめ明確にしておくことが大切です。
このため、事業者は、衛生委員会等で調査審議し、
産業医等の助言を受けながら、事業場の実態に応じた職場復帰支援プログラムを策定し、
組織的・計画的に運用することが求められます。
職場復帰支援プログラムには、
- 職場復帰支援の標準的な流れ
- 支援の手順や内容
- 関係者の役割
- 関連規程等や体制の整備
などを定めます。
また、策定した職場復帰支援プログラムや関連規程は、教育研修などを通じて、
労働者、管理監督者、事業場内産業保健スタッフ等へ十分に周知することも大切です。
労働者ごとに職場復帰支援プランを作成する
実際の職場復帰支援では、職場復帰支援プログラムに基づき、
支援対象となる労働者ごとに職場復帰支援プランを作成します。
その際は、労働者のプライバシーに十分配慮しながら、
- 労働者本人
- 管理監督者
- 事業場内産業保健スタッフ等
が協力し、主治医とも連携しながら支援を進めます。
主治医との連携と人事労務担当者の役割
心の健康問題がどのような状態にあるのかを事業場が判断することは難しいため、
主治医と連携しながら職場復帰を進めます。
また、事業場内産業保健スタッフ等の中でも、人事労務担当者は、
職場配置や労働条件、社内制度などの調整において重要な役割を担います。
このため、関係者がそれぞれの役割を果たしながら連携して支援を進めることが、
円滑な職場復帰につながります。
職場復帰支援を進める際の留意点
職場復帰支援では、制度を整えるだけでなく、
心の健康問題に対する正しい理解を職場全体で共有することも大切です。
手引きでは、職場復帰支援に当たり、次のような点にも配慮することが示されています。
- 心の健康問題に対する誤解や偏見をなくすこと
- メンタルヘルスに関する教育研修や情報提供を行うこと
- 本人だけでなく、同僚や管理監督者への負担にも配慮すること
- 必要に応じて家族の理解や協力を得ること
まとめ
メンタルヘルス不調による休業は、多くの企業で起こり得る身近な課題です。
このため、企業は休業者が発生してから対応を考えるのではなく、
あらかじめ職場復帰支援プログラムを整備し、
組織的・計画的に取り組める体制を整えておくことが重要です。
また、手引きでは職場復帰支援の標準的な流れが示されていますが、実際の支援では、
労働者の回復状況や事業場の状況を踏まえながら、主治医とも連携して進めることが大切です。
次の記事では、職場復帰支援の流れ(5つのステップ)について、
休業開始から復職後までの進め方を順番に解説します。

