ストレスチェックと個人情報|プライバシー保護と不利益取り扱いの禁止

前回の記事「ストレスチェックを職場環境改善に活かすには?」では、
ストレスチェックの結果を集団ごとに分析し、職場環境の改善につなげる方法について
解説しました。

ストレスチェックでは、労働者のストレスの状態など、健康に関する情報を取り扱います。
そのため、制度を実施する際には、労働者のプライバシーを守り、個人の情報を適切に
取り扱うことが重要です。

特に小規模事業場では、経営者や人事担当者と労働者との距離が近く、
「自分の結果を会社に知られるのではないか」と不安に感じる労働者もいるかもしれません。

事業者が、どの情報を知ることができ、どの情報を原則として知ることができないのかを
理解し、適切な実施体制を整えておくことが、労働者が安心してストレスチェックを受ける
ことにもつながります。

この記事では、ストレスチェックにおける個人情報の取扱いとプライバシー保護、
不利益取扱いの禁止について解説します。

目次

この記事のポイント

  • 個人のストレスチェック結果は、原則として本人の同意なく事業者に提供されない
  • ストレスチェック結果は「要配慮個人情報」にあたり、慎重な取扱いが必要
  • 面接指導の申出や面接指導結果など、法令に基づき事業者が取得できる情報もある
  • 取得した健康情報は、必要な範囲で適切に管理する
  • ストレスチェックの受検や面接指導の申出などを理由とした不利益な取扱いは禁止されている

個人のストレスチェック結果は、本人に直接通知される

ストレスチェックの個人結果は、ストレスチェックを実施した医師、保健師などの
実施者から、労働者本人に直接通知されます。

事業者が、実施者から個人のストレスチェック結果の提供を受ける場合には、
労働者本人の同意が必要です。
本人の同意なく、事業者が個人の結果を見ることはできません。

また、事業者が、ストレスチェック結果を保有している実施者や外部機関などに対して、
結果の提供を強要したり、不正に入手したりすることも認められていません。

ストレスチェック結果は「要配慮個人情報」

個人のストレスチェック結果は健康情報であり、個人情報保護法上の「要配慮個人情報」
にあたります。そのため、一般的な個人情報以上に慎重な取扱いが求められます。

本人の同意を得て事業者が結果の提供を受けた場合にも、
取得した情報を誰でも閲覧できるような状態にするのではなく、

  • 誰が情報を取り扱うのか
  • どのように保管するのか
  • 誰と、どの範囲まで共有するのか

などをあらかじめ整理し、必要最小限の範囲で取り扱うことが大切です。

特に小規模事業場では、担当者が複数の業務を兼務していることもあります。
ストレスチェックに関する情報を取り扱う担当者と、通常の人事・労務情報を取り扱う
担当者が同じ場合には、どの情報まで取り扱うことができるのかを明確にしておきましょう。

事業者が取得できる情報・できない情報を整理しておく

ストレスチェックに関する情報のすべてについて、本人の同意が必要になるわけではありません。
法令に基づき、事業者が取得できる情報もあります。

情報事業者による取得
個人のストレスチェック結果本人の同意が必要
面接指導の申出の有無本人の同意なく取得できる
面接指導結果本人の同意なく取得できる
面接指導後に医師から聴取した意見本人の同意なく取得できる

面接指導の申出や面接指導結果などは、事業者が法令に基づいて面接指導を実施し、
必要な就業上の措置を検討するために取得する情報です。

一方、個人のストレスチェック結果を事業者が取得するためには、結果が本人に通知された後に、
本人の同意を得る必要があります。

ストレスチェックに関する情報によって、事業者が取得するためのルールが異なることを、
人事労務担当者など制度に関わる担当者が理解しておくことが大切です。

面接指導で得た情報も必要な範囲で取り扱う

高ストレス者から面接指導の申出があった場合には、
事業者は医師による面接指導を実施し、その結果について医師から意見を聴きます。

この場合、事業者が必要とするのは、労働者の健康を確保するための就業上の措置を
検討するために必要な情報です。
面接指導で話された内容のすべてを、事業者が把握する必要があるわけではありません。

例えば、医師から事業者へ情報を提供する際には、就業上の措置を検討するために
必要な内容に整理するなど、労働者のプライバシーに配慮した取扱いが求められます。

面接指導については、「面接指導後の対応|医師の意見聴取と就業上の措置」で
詳しく解説しています。

ストレスチェックに関わる人には守秘義務がある

ストレスチェックや高ストレス者への面接指導の実施に関する事務に従事した人には、
労働安全衛生法により守秘義務が課されています。

ストレスチェックでは、実施者だけではなく、実施事務従事者が個人情報を取り扱う場合が
あります。そのため、実施体制を決める際には、

  • 誰が個人の結果を取り扱うのか
  • 誰が受検状況などの事務を担当するのか
  • どの情報まで閲覧できるのか

といった役割と権限を整理しておくことが大切です。

外部機関にストレスチェックを委託する場合にも、個人結果の通知方法や情報の保管方法、
事業者へ提供される情報の範囲などを事前に確認しておきましょう。

小規模事業場では、日々の運用にもプライバシーへの配慮を

労働者数の少ない事業場では、経営者や人事担当者と労働者との距離が近く、誰が高ストレス者
であるか、誰が面接指導を申し出たかなどを周囲から推測されやすい場合があります。

そのため、制度上のルールを守るだけではなく、実際の運用でもプライバシーへの配慮が必要です。
例えば、

  • 個人結果は本人へ直接通知する
  • 面接指導の申出を周囲に知られにくい方法にする
  • 関係書類やデータを限られた担当者だけが取り扱う
  • メールの宛先や件名、書類の置き場所などにも配慮する
  • 社内で共有する情報は必要な範囲にとどめる

といった対応が考えられます。
「誰がストレスチェックを受けたのか」「誰が面接指導を申し出たのか」といった情報が、
日常の業務の中で不用意に伝わらないよう、十分に配慮することが大切です。

不利益な取り扱いは禁止されている

ストレスチェック制度では、労働者が安心して制度を利用できるよう、
不利益な取り扱いについてもルールが定められています。

事業者には、ストレスチェックや面接指導に関して、労働者に不利益となる取り扱いを行わない
ことが求められます。
例えば、次のような取り扱いは禁止されています。

  • 面接指導を申し出たことを理由に、不利益な取り扱いをする
  • ストレスチェックの結果だけを理由に、不利益な取り扱いをする
  • ストレスチェックを受けなかったことを理由に、不利益な取り扱いをする
  • 個人結果を事業者へ提供することに同意しなかったことを理由に、不利益な取り扱いをする
  • 面接指導を申し出なかったことを理由に、不利益な取り扱いをする

ストレスチェックは、労働者本人に受検が義務付けられている制度ではありません。
労働者が安心して受検できる環境を整えるとともに、受検しなかったことや
個人結果の提供に同意しなかったことなどを理由として、不利益な取り扱いにつながらない
ようにすることが大切です。

面接指導後の不利益な取り扱いは禁止されている

面接指導の結果、医師から就業上の措置について意見が示されることがあります。
この場合も、面接指導を受けたという理由だけで、配置転換や職位の変更などを行うことは
適切ではありません。

事業者は、医師の意見を聴いたうえで、その内容を勘案し、
労働者本人の状況も踏まえて必要な措置を検討します。
面接指導の結果を理由として、

  • 解雇する
  • 有期契約労働者の契約を更新しない
  • 退職勧奨を行う
  • 不当な動機・目的による配置転換や職位の変更を行う

などの不利益な取り扱いを行ってはいけません。
就業上の措置は、労働者の健康を守りながら就業を継続できるようにするためのものです。

「高ストレス者だったから」「面接指導を受けたから」といった理由だけで判断する
のではなく、医師の意見や本人の状況を踏まえて検討することが必要です。

労働者にも事前に説明しておく

プライバシー保護の仕組みを整えるだけでなく、ストレスチェックに関する社内ルールを
労働者に周知しておくことも大切です。

ストレスチェックを実施する前に、個人結果の取扱いや面接指導の申出方法などについて
周知しておくことで、労働者も制度の仕組みを理解したうえで受検することができます。

特に、個人のストレスチェック結果は、本人の同意なく事業者に提供されないことを
伝えておくことは、労働者が安心して受検できる環境づくりにもつながります。

まとめ

ストレスチェックでは、労働者の健康に関する機微な情報を取り扱います。
事業者は、個人のストレスチェック結果を原則として本人の同意なく取得することは
できません。

一方、面接指導の申出や面接指導結果、医師から聴取した意見など、
法令に基づいて事業者が取得する情報もあります。

大切なのは、「誰が、どの情報を、どこまで取り扱うのか」をあらかじめ整理しておくことです。

特に小規模事業場では、担当者と労働者との距離が近いため、書類やデータの管理だけでなく、
面接指導の申出方法や社内での情報共有など、日々の運用にも配慮することが求められます。

労働者が安心してストレスチェックを受け、その後の相談や面接指導につなげられるよう、
プライバシーを守る仕組みを整えておきましょう。

次の記事「ストレスチェックを自社で実施する場合の留意点」では、
外部機関に委託せず、ストレスチェックを自社で実施する場合に確認しておきたい
実施体制や個人情報の管理などの留意点について解説します。

参考資料
厚生労働省 ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策
 -「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」
 -「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」
厚生労働省 関係法令等 
 -「ストレスチェック指針」
厚生労働省 職場における労働衛生対策
 -「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」

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この記事を書いた人

企業の健康管理室等で30年間、産業保健業務に従事。
健康管理、メンタルヘルス対策、安全衛生活動など幅広い業務に携わる。製造事業場では、特殊健康診断や職場巡視などの労働衛生業務も経験。
2026年、岡本労働衛生コンサルタント事務所を開業。
労働衛生コンサルタント|保健師|キャリアコンサルタント

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