前回の記事では、事業場外資源によるケアについてご紹介しました。
メンタルヘルス対策では、不調になった人への対応だけではなく、
労働者が安心して働ける職場づくりを進めることも重要です。
職場のストレス要因を見直し、働きやすい環境を整えることは、
メンタルヘルス不調の予防や、生産性の向上にもつながります。
この記事では、厚生労働省の
「労働者の心の健康の保持増進のための指針(メンタルヘルス指針)」に基づき、
職場環境改善の考え方や進め方、取り組みのポイントについて分かりやすく解説します。
ポイント
この記事のポイントはこちらです。
- 職場環境改善は、ストレスの原因を減らし、
働きやすい職場づくりを進める一次予防の取り組み - 職場環境改善は、現状把握から改善・評価までを継続的に繰り返すことが重要
- 事業者、管理監督者、事業場内産業保健スタッフ等、労働者が連携して取り組むことで、
より効果的な改善につながる
職場環境改善とは
職場環境改善とは、労働者が感じているストレス要因を見直し、
働きやすい職場づくりを進める取り組みです。
職場環境というと、
- 照明
- 温度
- 騒音
- 作業スペース
などの物理的な環境を思い浮かべる方も多いでしょう。
しかし、メンタルヘルス指針では、それだけではなく、
- 業務量
- 作業の進め方
- 役割や責任
- 情報共有
- 人間関係
- 会議の進め方
- 意思決定への参加
なども含めて、幅広く職場環境として考えることが重要とされています。
なぜ職場環境改善が必要なのか
新しい仕事に挑戦し、それを乗り越える経験は、成長や職場の活性化につながります。
一方で、
- 業務量が多すぎる
- 役割や責任があいまい
- 裁量が少ない
- 人間関係が良くない
- 相談しにくい
といった状態が続くと、ストレスが蓄積し、
- メンタルヘルス不調
- 生産性の低下
- ミスや事故
- 休職・離職
につながる可能性があります。
このため、メンタルヘルス対策では、不調になってから対応するだけではなく、
ストレスの原因そのものを改善する一次予防が重要です。
職場環境改善のポイント
厚生労働省では、職場環境改善のポイントとして、次のような内容を挙げています。
- 業務量や作業ペースが適切である
- 勤務時間や勤務形態に配慮されている
- 役割や責任が明確である
- 将来の見通しや評価が分かりやすい
- 良好な人間関係が保たれている
- やりがいを感じられる仕事である
- 職場の意思決定に参加する機会がある
すべてを一度に改善する必要はありません。
まずは、労働者が「働きにくい」と感じていることに目を向けることが、
改善の第一歩になります。
職場環境改善の5つのステップ
職場環境改善は、一度実施して終わりではなく、継続的に取り組むことが重要です。
メンタルヘルス指針では、次の流れで進めることが示されています。
| ステップ | PDCA | 内容 |
|---|---|---|
| ① 現状を把握する | - | ストレス要因や職場の課題を 把握する |
| ② 改善体制をつくる | - | 関係者が協力できる体制を整える |
| ③ 改善計画を立てる | PLAN | 改善内容や担当者を決める |
| ④ 改善を実施する | DO | 計画に沿って改善する |
| ⑤ 効果を確認し、改善を続ける | CHECK・ACT | 効果を評価し、改善を継続する |
それぞれのステップについて、順番に見ていきましょう。
現状を把握する
まずは、職場のストレス要因を把握します。
例えば、
- 管理監督者による日常の観察
- 労働者へのヒアリング
- 産業保健スタッフによる職場巡視
- ストレスチェックの集団分析結果
などが参考になります。
改善体制をつくる
職場環境改善は、産業保健スタッフだけで進めるものではありません。
管理監督者、人事労務担当者、労働者など、関係者が協力しながら取り組むことが重要です。
このため、改善を進めるための体制を整え、職場全体で課題を共有します。
このような取り組みは、事業場の「心の健康づくり計画」や衛生委員会の活動と連携しながら
進めることで、継続的な改善につながります。
改善計画を立てる
現状を踏まえ、
- どのような課題を改善するのか
- 誰が担当するのか
- いつまでに実施するのか
を具体的に決めます。
改善内容は、管理監督者だけで決めるのではなく、
現場で働く労働者の意見も取り入れながら検討すると、実効性が高まります。
また、厚生労働省では、職場環境改善を支援するヒント集やチェックリストなどの
ツールも紹介されています。必要に応じて活用すると、改善を進めやすくなります。
改善を実施する
改善計画に沿って対策を実施します。
実施後も、
- 計画どおり進んでいるか
- 労働者の負担になっていないか
などを確認しながら、継続的に取り組むことが大切です。
効果を確認し、改善を続ける
改善後は、
- 労働者の意見
- ストレスの状況
- ストレスチェックの集団分析結果
などを参考に、改善の効果を確認します。
十分な改善が得られなかった場合は、改善計画を見直し、継続して取り組むことが重要です。
中小企業で取り組みたい職場環境改善
中小企業では、大規模な制度変更や設備投資が難しいこともあります。
それでも、
- 業務量の偏りを見直す
- 情報共有を工夫する
- 役割分担を明確にする
- 意見を出しやすい雰囲気をつくる
- 休暇を取得しやすい職場づくりを進める
など、小さな改善の積み重ねが、働きやすい職場づくりにつながります。
また、ストレスチェックを実施している事業場では、
集団分析結果を職場環境改善に活用することも有効です。
まとめ
職場環境改善は、メンタルヘルス不調が起きてから対応するのではなく、
ストレスの原因そのものを減らすための取り組みです。
このため、現状を把握し、改善計画を立て、実施・評価を繰り返しながら、
継続的に改善を進めることが重要です。
管理監督者によるラインケアとあわせて、事業者、管理監督者、事業場内産業保健スタッフ、
人事労務担当者、労働者が連携し、働きやすい職場づくりを進めることで、
労働者の心の健康の保持増進につながります。
職場環境の改善を進めるとともに、労働者が安心して相談できる体制を整えることも、
メンタルヘルス対策には欠かせません。
次の記事では、メンタルヘルス対策の相談体制とは?|安心して相談できる職場づくりのポイント
について分かりやすく解説します。

