面接指導後の対応|医師の意見聴取と就業上の措置

前回の記事「高ストレス者への医師による面接指導|申出から実施まで」では、
高ストレス者から面接指導の申出があった場合の対応や、医師による面接指導の進め方
について解説しました。

面接指導を実施した後は、その結果を踏まえて、事業者が医師から意見を聴き、
必要に応じて就業上の措置を検討します。

医師の意見をそのまま実施するのではなく、労働者本人の意見を聴きながら、
実際の業務や職場の状況を踏まえて対応することが大切です。

この記事では、面接指導後の医師からの意見聴取、就業上の措置、面接指導結果の記録と
保存について解説します。

目次

この記事のポイント

  • 面接指導後は、医師から就業上の措置などについて意見を聴く
  • 医師からの意見聴取は、面接指導後、遅くとも1か月以内に行う
  • 必要に応じて、労働時間の短縮や業務負荷の軽減などの措置を検討する
  • 就業上の措置を決める際は、労働者本人の意見を聴く
  • 面接指導結果の記録は5年間保存する

面接指導後は医師から意見を聴く

高ストレス者に対する面接指導を実施した場合、事業者はその結果に基づき、
就業上の措置が必要かどうかや、必要な措置の内容について医師から意見を聴かなければ
なりません。

医師の意見聴取は、面接指導を実施した後、遅滞なく行います。
具体的には、遅くとも面接指導後1か月以内に意見を聴く必要があります。

なお、労働者の健康状態から緊急に就業上の措置が必要と考えられる場合には、
1か月を待つのではなく、可能な限り速やかに対応します。
意見は、面接指導を実施した医師から聴くことが適当とされています。

医師の意見では何を確認する?

医師からの意見では、主に次の2つを確認します。

就業区分と就業上の措置

労働者の健康状態などを踏まえて、
医師から就業区分や必要な就業上の措置について意見が示されます。

就業区分内容就業上の措置の例
通常勤務通常の勤務でよい―
就業制限勤務に一定の制限が必要労働時間の短縮、時間外労働や出張の制限、労働負荷の軽減、作業の転換、就業場所の変更、深夜業の減少など
要休業勤務を休む必要がある休暇や休職などにより、一定期間勤務させない

実際にどのような措置が必要かは、労働者の健康状態だけではなく、
仕事内容や勤務状況なども踏まえて検討します。

職場環境の改善に関する意見

医師からは、個人に対する就業上の措置だけではなく、必要に応じて
職場環境の改善について意見が示されることがあります。

例えば、業務量や業務分担、長時間労働、職場の人間関係など、
労働者本人への対応だけでは解決しにくい問題が背景にある場合です。

このような場合には、人事労務担当者や管理監督者などと連携し、必要な対応を検討します。

特に職場の人間関係などに関する情報を扱う場合には、関係者への情報共有を
必要な範囲にとどめるなど、プライバシーへの配慮が必要です。

医師の意見を踏まえて就業上の措置を検討する

事業者は、医師の意見を踏まえ、必要があると認められる場合には、
労働者の実情を考慮して就業上の措置を講じます。
例えば、

  • 時間外労働を制限する
  • 深夜勤務を減らす、または昼間勤務へ変更する
  • 業務量や業務負荷を調整する
  • 担当する作業を変更する
  • 就業場所を変更する
  • 必要に応じて休暇や休職とする

などが考えられます。
大切なのは、医師の意見を踏まえながら、
その労働者の健康状態と実際の職場の状況に応じて、必要な措置を検討することです。

就業上の措置を決めるときは本人と話し合う

就業上の措置を決定する場合には、あらかじめ労働者本人の意見を聴きます。

どのような働き方であれば無理なく勤務できるのか、現在の業務でどのような負担を
感じているのかなどを確認し、十分に話し合いながら対応を検討します。

また、就業上の措置が労働者に対する不利益な取扱いにつながらないよう
留意することも必要です。
必要に応じて、産業医などに同席してもらいながら話し合うことも考えられます。

管理監督者との連携も必要

労働時間や業務量、担当業務などを調整するためには、
実際の職場を管理する管理監督者との連携が必要になります。

その際には、労働者のプライバシーに配慮しながら、
就業上の措置を実施するために必要な情報に限って共有することが大切です。

診断名や具体的な症状など、措置を実施するうえで必要のない医学的な情報まで
伝える必要はありません。

管理監督者には、就業上の措置の目的や期間、具体的にどのような配慮が必要なのかを伝え、
職場で適切に対応できるようにします。

小規模事業場などで管理監督者がいない場合には、業務量や業務分担を調整するために
必要な範囲で、同僚などへの説明が必要になることもあります。
この場合も、共有する情報は必要最小限とします。

措置を行った後も状況を確認する

就業上の措置は、一度決めたらそのまま続けるものではありません。

医師の意見書に措置期間が示されている場合には、その期間を一つの目安として、
労働者の状態を確認します。

ストレス状態の改善がみられた場合には、必要に応じて医師に再度相談しながら、
就業上の措置を変更・解除し、通常勤務に戻すことを検討します。

反対に、状態が改善しない場合や悪化している場合には、現在の措置が適切かどうかを
改めて検討することが必要です。

面接指導結果の記録は5年間保存する

事業者は、面接指導結果の記録を5年間保存しなければなりません。
記録には、次の内容を含めます。

① 面接指導の実施年月日
② 労働者の氏名
③ 面接指導を行った医師の氏名
④ 労働者の勤務の状況
⑤ 労働者の心理的な負担の状況
⑥ その他の労働者の心身の状況
⑦ 労働者の健康を保持するために必要な措置についての医師の意見

医師から提供される情報は、就業上の措置を行うために必要最小限の情報とされています。
診断名、検査値、具体的な症状などの詳細な医学的情報は、原則として事業者に提供される
ものではありません。

事業者側からも、このような詳細な医学的情報の提供を求めないようにします。
面接指導結果や医師の意見書は健康情報に当たるため、
閲覧できる人を必要な範囲に限定するなど、適切に管理することが必要です。

面接指導を個人への対応だけで終わらせない

面接指導を通じて、業務量の偏りや長時間労働、職場の人間関係、業務分担など、
職場全体の課題が見えてくることがあります。

このような場合には、個人への就業上の措置だけではなく、
必要に応じて職場環境の改善についても検討することが大切です。

一人の労働者への対応をきっかけとして、同じような負担が職場全体に生じていないかを
確認することも、ストレスチェックを職場の健康づくりに生かすことにつながります。

まとめ

高ストレス者への面接指導を実施した後は、事業者が医師から意見を聴き、
必要に応じて就業上の措置を検討します。

就業上の措置を決める際には、医師の意見だけで判断するのではなく、労働者本人の意見や
実際の業務の状況を確認しながら、職場で対応可能な方法を検討することが大切です。

また、措置を実施した後も労働者の状態を確認し、
必要に応じて措置の変更や解除を検討していきます。

面接指導を個人への対応だけで終わらせず、背景に職場環境の課題がないかという
視点を持つことも、ストレスチェック制度を有効に活用するうえで重要です。

次の記事「高ストレス者への相談対応|面接指導を受けない場合の支援」では、
高ストレス者が医師による面接指導を受けない場合も含め、
利用できる相談窓口や事業者が行う情報提供について解説します。

参考資料
厚生労働省 ストレスチェック制度・メンタルヘルス対策
 -「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」
 -「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」
厚生労働省 関係法令等 
 -「ストレスチェック指針」

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この記事を書いた人

企業の健康管理室等で30年間、産業保健業務に従事。
健康管理、メンタルヘルス対策、安全衛生活動など幅広い業務に携わる。製造事業場では、特殊健康診断や職場巡視などの労働衛生業務も経験。
2026年、岡本労働衛生コンサルタント事務所を開業。
労働衛生コンサルタント|保健師|キャリアコンサルタント

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