健康診断の結果を活かすには?|結果に基づく事後措置から健康づくり

前回の記事「定期健康診断とは?|事業者と労働者の義務、2027年4月からの変更点」では、
定期健康診断の対象者や検査項目、事業者に求められる対応について解説しました。

健康診断は、労働者の健康状態を把握し、健康を守るための大切な機会です。

そして、健康診断を実施した後は、その結果を記録し、必要に応じて医師等の意見を聴いた
うえで、就業上の措置や保健指導などにつなげていくことが求められています。

また、健康診断の結果は、病気の早期発見や受診につなげるだけでなく、
労働者が自分自身の健康状態を振り返り、日頃の健康づくりに取り組むきっかけにもなります。

今回は、健康診断後に事業者が行う対応と、健診結果を職場の健康づくりに活かしていく
ためのポイントについて解説します。

目次

この記事のポイント

  • 健康診断を実施した後に必要な対応
  • 医師等の意見を踏まえた就業上の措置の考え方
  • 再検査・精密検査の受診勧奨と保健指導
  • 健診結果を職場の健康づくりに活かすポイント

健康診断は結果を活かすことが大切

労働安全衛生法では、事業者に健康診断の実施を義務付けるだけでなく、
健康診断後に行う対応についても定めています。

健康診断の結果を記録して本人に通知し、異常の所見がある場合には、
必要な措置について医師等の意見を聴きます。

さらに、その意見を踏まえて必要な就業上の措置を行うほか、
健康状態に応じて保健指導や受診につなげていきます。
健康診断を、労働者の健康を守るための次の対応につなげていくことが大切です。

健康診断後に事業者が行うこと

健康診断を実施した後には、主に次のような対応が必要です。

健康診断後の対応主な根拠
健康診断結果の記録労働安全衛生法第66条の3
医師等からの意見聴取労働安全衛生法第66条の4
必要な就業上の措置労働安全衛生法第66条の5
労働者への結果通知労働安全衛生法第66条の6
医師・保健師による保健指導労働安全衛生法第66条の7
健康診断結果の報告(対象となる事業場)労働安全衛生法第100条、労働安全衛生規則第52条等

厚生労働省のリーフレットでも、健康診断実施後の事業者の取り組みとして、
この一連の流れが示されています。
まずは、それぞれの対応について確認していきましょう。

健康診断の結果を記録し、労働者本人に通知する

事業者は、健康診断の結果について健康診断個人票を作成し、法令で定められた期間
保存する必要があります。

また、健康診断を受けた労働者には、異常の所見の有無にかかわらず、
健康診断の結果を通知します。

結果を本人に知らせることは、労働者が自分の健康状態を知り、
自らの健康管理につなげるためにも大切です。

健康診断結果には、病歴や検査値などの大切な健康情報が含まれます。
結果の保管や取り扱いについては、プライバシーに十分配慮しましょう。

異常の所見がある場合には医師等の意見を聴く

健康診断の結果、異常の所見がある労働者については、事業者は、その労働者の健康を
保持するために必要な措置について、医師または歯科医師の意見を聴かなければなりません。

ここで大切なのは、「有所見=すぐに就業制限」と考えるものではないということです。

健康診断の数値だけでは、その労働者が現在の仕事を続けられるのか、
どのような配慮が必要なのかを判断することはできません。
医師等が適切に判断できるよう、必要に応じて、

  • 労働時間
  • 作業内容
  • 作業環境
  • 深夜業などの勤務状況
  • 健康診断後の受診状況

など、業務に関する情報を提供します。
健康状態と仕事の状況の両方を踏まえて、必要な対応を検討していくことが大切です。

医師等の意見を踏まえて必要な就業上の措置を行う

医師等から意見を聴いた結果、必要があると認められる場合には、
事業者はその意見を勘案して、労働者の実情を考慮しながら適切な措置を講じます。
たとえば、

  • 就業場所の変更
  • 作業の転換
  • 労働時間の短縮
  • 深夜業の回数の減少

などが考えられます。
どのような措置が必要かは、健康状態や仕事内容によって異なります。

一律に仕事を制限するのではなく、医師等の意見を踏まえながら、
労働者が健康を確保しながら働き続けられる方法を検討することが大切です。

また、就業上の措置を行う場合には、労働者本人の意見を聴き、十分な話し合いを通じて
本人の理解が得られるよう努めることも重要です。

再検査・精密検査が必要な人には受診を勧める

健康診断の結果、「要再検査」「要精密検査」「要受診」などと判定されることがあります。
こうした結果をそのままにせず、必要な検査や治療につなげていくことが大切です。

「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」では、
再検査や精密検査を行う必要のある労働者に対して、その受診を勧奨するとともに、
その結果を、事業者が意見を聴く医師等に提出するよう働きかけることが適当とされています。

再検査や精密検査を受けることで、健康診断だけでは十分に分からなかった健康状態が明らか
になり、医師等が就業上の措置について意見を述べる際の判断材料となることもあります。

受診勧奨は、人事労務担当者がすべての健康情報を把握して直接行わなければならないという
ものではありません。産業医や保健師などの産業保健スタッフがいる場合には、
それぞれの役割や健康情報の取り扱いをあらかじめ定め、連携して対応することが大切です。

なお、再検査や精密検査は、診断の確定や症状の程度を明らかにするために行われるものであり、
一律に事業者に実施が義務付けられているものではありません。

ただし、有機溶剤中毒予防規則、鉛中毒予防規則、特定化学物質障害予防規則、
高気圧作業安全衛生規則、石綿障害予防規則に基づき、特殊健康診断として再検査や精密検査が
規定されているものについては、事業者にその実施が義務付けられています。

健康診断の種類によって事業者に求められる対応が異なるため、
自社で実施している健康診断に応じて、適切に対応しましょう。

保健指導で労働者の健康管理を支える

健康診断は、病気を見つけるだけでなく、これからの健康管理について考える機会にもなります。

労働安全衛生法第66条の7では、一般健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要があると
認める労働者について、事業者は医師または保健師による保健指導を受けさせるよう努めること
とされています。保健指導では、健康診断の結果や本人の生活状況などを踏まえながら、

  • 食生活
  • 運動
  • 睡眠・休養
  • 飲酒や喫煙
  • 日頃の健康管理
  • 必要に応じた医療機関への受診

などについて一緒に考えていきます。

「生活習慣を改善してください」と伝えるだけでは、
実際の行動にはつながりにくいこともあります。本人が取り組みやすいことを一緒に考え、
無理なく続けられる健康づくりを支援していくことが大切です。

健診結果を職場の健康づくりにも活かす

健康診断は、一人ひとりの健康管理だけでなく、職場全体の健康づくりを考える
きっかけにもなります。

労働安全衛生法第69条では、事業者は、労働者に対する健康教育や健康相談など、
健康の保持増進を図るため必要な措置を継続的かつ計画的に講ずるよう努めることと
されています。

この健康保持増進措置を適切かつ有効に進めるために示されているのが、
労働安全衛生法第70条の2に基づく「事業場における労働者の健康保持増進のための指針
(THP指針)」です。THP指針では、労働者の健康状態を把握し、その結果に応じた
健康指導などを行うことが示されています。たとえば、

「血圧が高い人が増えている」
「運動習慣のない人が多い」
「年齢とともに身体機能の低下が気になる人が増えてきた」

など、職場で見えてきた健康課題を踏まえて、健康教育や運動の機会づくりなどに
つなげていくこともできます。

ただし、健診結果は大切な個人情報です。
職場全体の健康づくりに活用する場合にも、個人が特定されないようにするなど、
健康情報の適切な取り扱いに十分配慮する必要があります。

高齢化も見据えた職場の健康づくりへ

働く人の高齢化が進むなか、生活習慣病の予防だけでなく、年齢を重ねても健康で安全に
働き続けられるように支援することが、これまで以上に大切になっています。

THP指針では、労働者の高齢化を見据え、健康状態を継続的に把握するとともに、
身体機能の維持・向上に取り組むことが示されています。

たとえば、身体機能のセルフチェックやフレイルチェックなどを活用して体力の状態を把握し、
その結果を運動指導や保健指導などにつなげていくことも考えられます。

すべてを一度に始める必要はありません。
まずは健康診断をきちんと実施し、その結果を必要な事後措置や受診、保健指導につなげます。

そのうえで、自社の労働者の年齢構成や健康課題などに合わせて、
できるところから健康づくりの取り組みを広げていくとよいでしょう。

まとめ

健康診断は、実施して終わりではなく、その結果を労働者の健康管理に活かしていく
ことが大切です。健康診断後には、結果に応じて、

  • 健康診断の結果を記録し、労働者本人に通知する
  • 異常の所見がある労働者について、医師等の意見を聴く
  • 医師等の意見を踏まえ、必要な就業上の措置を行う
  • 必要に応じて、再検査・精密検査や医療機関の受診につなげる
  • 保健指導などを通じて、労働者の健康保持・増進につなげる

といった対応が求められます。
健康診断の結果や労働者の状況に応じて、それぞれ必要な対応を進めていきましょう。

健康診断の結果を適切な事後措置や保健指導につなげていくことが、
労働者の健康を守り、安心して働き続けられる職場づくりにつながります。

参考資料
厚生労働省 「職場における労働衛生対策」
 - 「健康診断を実施しましょう」
 - 「定期健康診断等の診断項目の取扱いが一部変更になります」
厚生労働省 「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」
厚生労働省 「事業場における労働者の健康保持増進施策」
 -「事業場における労働者の健康保持増進のための指針(THP指針)」

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この記事を書いた人

企業の健康管理室等で30年間、産業保健業務に従事。
健康管理、メンタルヘルス対策、安全衛生活動など幅広い業務に携わる。製造事業場では、特殊健康診断や職場巡視などの労働衛生業務も経験。
2026年、岡本労働衛生コンサルタント事務所を開業。
労働衛生コンサルタント|保健師|キャリアコンサルタント

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