定期健康診断とは?|事業者と労働者の義務、2027年4月からの変更点

健康診断は、働く人の健康状態を確認し、健康を守りながら働き続けるための大切な機会です。

労働安全衛生法では、事業者に労働者への健康診断の実施を義務付けるとともに、
労働者にも事業者が行う健康診断を受けることを義務付けています。

毎年実施している事業場では、「今年も例年どおり」と進めている かもしれません。
しかし、健康診断には、対象となる労働者や実施する項目、実施後の対応などについて、
法令で定められたルールがあります。

また、2027年4月からは、定期健康診断などの診断項目の取り扱いが一部変更されます。
この記事では、定期健康診断の基本的な仕組みと、2027年4月からの主な変更点について
解説します。

目次

この記事のポイント

  • 定期健康診断を実施する目的と事業者・労働者の義務
  • 定期健康診断の対象となる労働者と主な診断項目
  • 2027年4月から変更される健康診断項目
  • 診断項目を省略する場合の考え方

定期健康診断はなぜ必要?

労働安全衛生法第66条では、事業者は労働者に対して、医師による健康診断を実施しなければ
ならないと定められています。
一方、労働者にも、事業者が行う健康診断を受ける義務があります。

健康診断は、病気を早期に発見することだけを目的としたものではありません。
労働者の健康状態を把握し、必要に応じて就業上の措置などにつなげることで、
健康を守りながら働くことができるようにすることも重要な目的です。

事業者は健康診断を実施する機会を設け、対象となる労働者が適切に受診できるように
していく必要があります。

事業者が実施する主な一般健康診断

労働安全衛生法に基づいて事業者が実施する一般健康診断には、いくつかの種類があります。
代表的なものが、次の健康診断です。

  • 雇入時の健康診断
    常時使用する労働者を雇い入れる際に実施します。
  • 定期健康診断
    常時使用する労働者に対して、1年以内ごとに1回実施します。

このほか、深夜業など一定の業務に常時従事する労働者を対象とした特定業務従事者の
健康診断や、海外に6か月以上派遣する労働者を対象とした健康診断などがあります。
また、有害な業務に従事する場合には、一般健康診断とは別に特殊健康診断があります。

自社で働く労働者について、法令に基づき必要な健康診断を確認し、
対象となる労働者に適切に健康診断を実施しましょう。

定期健康診断の対象となるのは?

定期健康診断の対象となるのは、原則として「常時使用する労働者」です。
正社員だけが対象というわけではありません。

パートタイマーや有期契約労働者などについても、次の要件を満たす場合には、
定期健康診断の対象となります。

  • 期間の定めのない労働契約である、または有期契約であっても、契約期間が1年以上、
    契約更新により1年以上使用される予定、もしくは1年以上引き続き使用されている
  • 1週間の労働時間が、同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間の
    4分の3以上である

雇用形態だけで判断するのではなく、契約期間や労働時間などを確認して
対象者を把握することが大切です。

定期健康診断ではどのような検査を行う?

定期健康診断では、労働安全衛生規則第44条により、実施する診断項目が定められています。
現在の診断項目に加え、2027年4月からは「血清クレアチニン検査」が新たに追加されます。

診断項目医師が必要でないと認めるときに省略できる者
既往歴・業務歴の調査―
自覚症状・他覚症状の有無の検査―
身長20歳以上
体重―
腹囲40歳未満(35歳を除く)、妊娠中の女性、BMIが20未満の者など、一定の要件に該当する場合
視力―
聴力45歳未満(35歳・40歳を除く)は、医師が適切と認める他の方法によることができる
胸部エックス線検査40歳未満(20歳・25歳・30歳・35歳を除く)で、結核に係る定期健康診断や、じん肺健康診断の対象者などに該当しない場合
血圧―
貧血検査35歳未満、36~39歳
肝機能検査35歳未満、36~39歳
血中脂質検査35歳未満、36~39歳
血糖検査35歳未満、36~39歳
血清クレアチニン検査【2027年4月から追加】40歳未満
尿検査―
心電図検査35歳未満、36~39歳

※ 診断項目の省略は、年齢だけで一律に決めるものではありません。
 個々の労働者について、健康状態の経時的な変化や自覚症状・他覚症状などを考慮し、
 医師が必要でないと認める場合に限られます。

2027年4月から健康診断項目が一部変更

2027年4月1日から、労働安全衛生法に基づく定期健康診断などの診断項目について、
主に3つの変更があります。

血清クレアチニン検査が追加される

2027年4月から、一般健康診断の項目に血清クレアチニン検査が追加されます。
血清クレアチニン検査は、腎臓の機能を調べるための検査です。

今回の改正の背景には、長時間労働と慢性腎臓病(CKD)の発症リスクなど、
業務と腎機能との関係があります。

また、これまでの健康診断で行われている尿蛋白検査や血圧、血糖検査などでは把握できない
腎機能の低下についても、血清クレアチニン検査を行うことで把握できることが示されています。
こうしたことから、一般健康診断の項目として追加されることになりました。

なお、定期健康診断では、40歳未満の労働者については、健康状態などを踏まえて
医師が必要でないと認める場合には省略することができます。

健康診断で腎機能の低下が確認された場合には、結果を確認するだけではなく、
医師の意見を聴き、必要な就業上の措置を検討するとともに、医療機関への受診勧奨などに
つなげることが大切です。

喀痰検査が削除される

これまで喀痰検査は、定期健康診断などの診断項目の一つとして定められていましたが、
2027年4月から法定の健康診断項目から削除されます。
これは、結核への対応が不要になるということではありません。

胸部エックス線検査の結果から結核が疑われる場合には、健診機関で喀痰検査を行って
その結果を待つのではなく、速やかに医療機関への受診勧奨を行うことが適当とされています。

実際の健診現場でも、結核感染が疑われる場合には、健診機関で追加の喀痰検査を行わず、
医療機関への受診を勧める対応が行われています。

今回の改正は、こうした実際の対応を踏まえて、一般健康診断の項目を見直したものです。

肝機能検査の名称が変更される

肝機能検査では、これまで使用されてきた酵素の名称が、2027年4月から変更されます。
これは、検査そのものが新しいものに変わるわけではありません。

GOT → AST
GPT → ALT
γ-GTP → γ-GT

現在、国際的にはAST、ALT、γ-GTという名称が用いられており、
今回の改正では、肝機能検査の名称を国際基準に合わせるために変更されます。

なお、旧名称の方が事業者や労働者に分かりやすい場合などには、
健康診断の結果通知などで、新名称と旧名称を併記することも差し支えないとされています。

健診項目の省略は一律に判断するものではない

定期健康診断では、年齢など一定の基準を満たす場合に省略できる診断項目があります。
ただし、対象となる年齢だから自動的に省略できるということではありません。

診断項目を省略できるのは、法令で定められた基準に該当したうえで、
医師が必要でないと認めた場合です。その判断は、個々の労働者について、

  • これまでの健康状態や検査結果の変化
  • 自覚症状・他覚症状
  • 既往歴
  • その他の健康状態

などを踏まえて行います。事業者や健診担当者が、年齢だけを基準として
一律に検査項目を省略するものではありません。

健康診断を健診機関に委託している事業場でも、どのような基準で項目の省略が
行われているのか、一度確認しておくとよいでしょう。

健康診断を働く人の健康管理につなげる

毎年の健康診断は、事業場にとって身近な健康管理の取り組みの一つです。
対象となる労働者を確認し、必要な健康診断を適切に実施することが基本となります。

健康診断は、実施して結果を受け取れば終わりではありません。

健康診断の結果を記録し、労働者本人に通知することに加えて、
異常の所見がある労働者について医師から意見を聴き、必要に応じて就業上の措置を検討するなど、
健康診断後にも事業者が行うべき対応があります。

また、必要な労働者を保健指導や医療機関への受診につなげていくことも、
働く人の健康を守るうえで大切です。

次の記事では、「健康診断の結果を活かすには?|結果に基づく事後措置から健康づくり」
について解説します。

参考資料
厚生労働省 「職場における労働衛生対策」
 -「健康診断を実施しましょう」
 -「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等の診断項目の取扱いが一部変更になります」
 -「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令の施行等について」


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この記事を書いた人

企業の健康管理室等で30年間、産業保健業務に従事。
健康管理、メンタルヘルス対策、安全衛生活動など幅広い業務に携わる。製造事業場では、特殊健康診断や職場巡視などの労働衛生業務も経験。
2026年、岡本労働衛生コンサルタント事務所を開業。
労働衛生コンサルタント|保健師|キャリアコンサルタント

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